失踪日記

(ずいぶん前に読んだんだけど、未だ書評とか見かけるので、ちょっと書く。)
天才は我々凡人の羨望と嫉妬の的だ。なので、他人の不幸は蜜の味というけれど、天才の不幸話は、輪を掛けてオイシイものだ。(そう感じる自分が卑しいとも思うけど。)おまけに、世の中には天才の天才であるが故の不幸話ってのが、けっこうころがっている。凡人はそれを聞いて安心できたり、凡人故の幸せを噛みしめたりするわけですな。
しかし、だ。世の中には、とんでもない天才もいる。不幸なんだけど、自らのその不幸な状態となんとか折り合いをつけ、そしてそれを「力」として表現していく人が。
この本を読んで、そんな彼の天才っぷりを更に思い知らされて、もう、完全に「降参」した。羨望も嫉妬もなく、ただ彼に圧倒されるのみって感じだ。たしかに、この本に書かれた彼は昔の彼ではない。昔の天才っぷりはあまり見られない。しかし、以前は(私には)はっきりとは分らなかった彼の別な天才っぷりは遺憾無く発揮されている。
とにかく、彼には書き続けて欲しい。私も読み続けるから。