うまい日本酒はどこにある?

tearus2004-10-04

先週は、例の辞めた同僚らの送別会等で2度ほど飲み会に参加した。飲まずに飲み会に参加するのは産まれて始めての経験だったけど、以外と楽しかった。参加メンバーが比較的上品な酒飲みが多かったこともあるが、シラフでほろ酔いの人を見るのが単純に楽しい。飲めないフラストレーションを感じないわけではなかったが、酒の味を楽しむのと、飲み会で楽しく会話するのとは、楽しみとして違うものだなぁ、と改めて感じた。
さて、まだまだ酒は飲めないので、シラフでいる時間が長い。そこでこんな本を
読んでみた。
増田晶文 / うまい日本酒はどこにある? ( ISBN:4794213476 )
ビールの本ではなく、日本酒の本である。私は日本酒の知識は殆どないけれど、地酒が追いてあるような店で飲む時は、大概2杯目は日本酒だ。以前、宮城と石川に住んでいたことがあって、わりと自然に日本酒に親しんではいた。特に石川では、車で10分の隣町に菊姫と萬歳楽の蔵元が、アパートから歩いて5分ぐらいのところに福の宮の宮本酒造があった。郷に入らば郷に従え、東京よりは安価に手に入ったこともあり、ビールより日本酒を良く飲んでいた。
さて、自分の話はこれぐらいにしよう。この本は、汎日本酒主義者を自称する筆者が、日本酒を取りまく厳しい現状*1と、その中で奮闘する蔵元等の日本酒に携わる人達を取材したノンフィクションである。
こう書くとプロジェクトXばりの熱いお涙頂戴の本を想像するかもしれないが、筆者の筆致は至って淡々としている。特定の人や企業をヒーロー視して過大に持ち上げることもなければ、何かを諸悪の根源として落しめるでもない。必要以上に悲観的でも楽観的でもない。もちろん、論文ではないので、統計に基づいた客観的な数字や事実に基づいて論を進めていくものではなく、当然筆者の主観が強く現れたものではあるが、丹念な取材に基づいた、バランスが取れた落ちついた内容となっている。それが逆に日本酒の置かれた状況の深刻さと、その状況で奮闘する人達の思いが浮きぼりになっている。
特に印象深かったのは、大メーカーにも取材していること。そして、その営業や経営のあり方には苦言を呈しているが、その技術者への視線は同じ日本酒を愛するものとして好意的であることだ。
私にとって、ビールが第一、ビールを主専攻とする気持に変りはないが、副専攻を日本酒にしようと本気で思わせる、そんな本だった。

*1:本当に危機的だ。詳しいことはこの本を読んでいただくとして、一例を上げると、2003年の清酒の消費量はピークの半分近くで、焼酎に抜かれ、シェアも10%以下だそうだ。