Joy Division

さて、映画 Joy Division について、もう少々、書いてみたい。
一応、念のため書いておくと、この映画は、70年代末のマンチェスターのロックバンド、Joy Division についての、ドキュメンタリ映画だ。その性格上、そもそも、Joy Division のことをある程度知っている人向けの映画。予備知識なく見てもなんのことか、さっぱりわからないと思う。

シーンの殆どは、バンドの関係者のインタビューからなる。そして、Joy Division というバンドの性格上、その内容は、自殺したヴォーカリスト Ian Curtis が中心となる。

ということで、前に書いたように、その Ian Curtis を主人公にした、映画 Control が、この映画を見る上で、良い予習になる、というわけだ。

それから、この映画のもう一つのテーマは、マンチェスターという街のようだ。マンチェスターは、イギリスの工業の中心として繁栄と衰退を経験してきたが、Joy Division の音楽の力によって、文化的な復興の力を得た。その物語を描く、というもののようだ。

なので、この映画をより楽しむためには、マンチェスターについても、予習したほうが良いと思う。最近はだいぶ復興が進んだようだが、マンチェスターの街の過去の栄光の跡と、その後の衰退と荒廃のすさまじさは、10年前に、私がかの地を訪ずれた時には、街のあちこちに見ることができた。

その街のありようそのものが、彼らの音楽に強く影響し、また、彼らの音楽が、この街に力を与えた、ということを、この映画は言おうとしていたようだ。(それが成功していたかどうかは、少々話は別だが。)

そんなわけで、見覚えのある風景が時々画面に現れ、個人的には、懐しくもあり、New Order のメンバをはじめとする、登場する人たちの話にも、個人的には「街」の雰囲気を感じることができた。
でも、マンチェスターに行ったことがない人には、なんのことやら、だと思う。

さて、本題の Joy Division だが、Control では偶像化されすぎた Ian の姿も、別の視点で捉えることができた。
まず感じたのは、The other three (≒ New Order)も Tony もバカ過ぎ。周囲の誰も Ian のことを理解できず、彼は本当に"Isolation"だったんだな、というのが良くわかった。ま、彼らも若かったし、仕様がないとも思う。(たぶん私も若いころは、そんなもんだったと思う。)
逆に言うと、そんな、わからなかった人のインタビューからなるこの映画を見ても Ian のことは、よくわからないまま、ということだ。

ただ、Ian 自身は、自分のことは、わりとわかってはいたようだ、ということはわかった。もちろん、わかっていたからといって、解決はできなかったわけだが。周囲が彼の事をもうすこし理解していれば、自殺はしないですんだかもしれないが、やはり、問題は解決はしそうにもない。彼が Joy Division を続けていくことは不可能だった。それは、良くわかった。

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すっかり魔法使いのお婆さんと化した Throbbing GristleGenesis P-Orridge が、かなりしゃべりまくっていたのが意外だった。彼らと、それほど親交があったとは知らなかった。(それとも、単にシャベリたいだけだったのか。)

Deborah は字幕のみの登場(?)だったが、Annikはインタビューに答えていた。彼女が人でちょっと驚いた。Stephen も言っていたけど、都会的で知的な彼女には、田舎の文学青年は、ひとたまりもなかっただろう。