小皇帝の涙

http://www.nhk.or.jp/special/onair/080106.html
日曜日のNHK特集。
小皇帝と呼ばれている中国の一人っ子政策下の小学生達が、実はなかなか大変な(勉学の)競争に晒されているという話。
日本でも、戦後の復興期から、80年代ぐらいまでは、厳しい受験戦争があったわけで*1、経済成長著しい中国でも競争が激しくなるのは道理か。
とはいえ、日本のかつての状況とはやや違う面が感じられる。
まず、感じたのは、「受験戦争」ではなく、日々の学校内での競争が熾烈な点だ。学校での宿題が睡眠不足になるほど多く、さらに、2週間毎に試験があるという。クラスの中でも成績で序列ができる。さすが科挙の国というか、人々に浸みついた成績主義はそら恐しいものがある。
次に感じたのが、これが非常に現代的なのだが、小学生本人にも、勉強を強いる親にも希望がない、という点だ。どういうことかというと、勉強して良い大学に入って良い成績を収めないと、仕事が得られない。だから、小学生から勉強するのだ、と。
かつての日本では、良い大学に入れば良い生活が待っている、だから勉強するのだ。そういう認識で、受験戦争を戦っていたのだと思う*2。それに対して、中国の親も小学生達も、とてもネガティブだ。親はリストラの危機に常に晒され、勉強しないと喰っていけない現実を強く認識している。だから子に勉強を強いる。子は抗するすべもなく、強いストレスを感じながらも従って行く。
日本の成長期は世界的にも成長期で、競争はあれど、皆が豊かになれた。でも、中国の今は、グローバルな競争の中での成長期だ。同じ成長期とはいえ、将来に対する希望はずいぶんと違うようだ。

まぁ、番組で取り上げるような、一部の状況を見ただけではよくわからないけれど、中国の都市部でこの状況が進んでいるとすれば、これでは、人民がもたないと思う。この競争を勝ち抜いた人材は世界で勝ち抜けるすばらしい人材となると思うけれど、中国という国のレベルでは果たして精神的にも豊かな世界になれるのだろうか?
同じくNHK特集でやっていたインドの衝撃でも、貧しい子供たちが、激烈に勉強していたが、なんかこちらのほうは、子供たちが元気でポジティブだったように思う。
この番組だけで判断するわけではないのだが、中国の未来は明い、とは単純に言えない面を見た気がする。

しかし、テレビカメラが入っているのに、やたら人々の発言が率直な点が、少々気になったけれど(中国人ってこうなの?)、まさかヤラセはないよね?
ともあれ、NHKは良いところに目をつけるものだと思う。いろいろ問題はあるけれど、NHKがこのような番組を作れる体制だけは維持して欲しいと思う。

*1:とはいえ、田舎育ちの私には受験戦争は無縁だった。じつにノンビリとしていた。

*2:ええ、私は経験ないですが。